革の縫い方:手縫いとミシン、それぞれの魅力と特性
革の縫い方の基本
革製品の完成度を大きく左右する要素のひとつが「縫製(ほうせい)」です。
どんなに良質な革を使っても、縫い方が適切でなければ製品の耐久性や見た目の美しさは損なわれてしまいます。
革の縫い方には主に手縫いとミシン縫いの2種類があり、それぞれに明確な特長と弱点があります。
「どちらが優れているか」という単純な話ではなく、目的や使用シーンによって最適解は異なります。
この記事では、革製品づくりにおける縫製の基本を改めて整理しながら、手縫いとミシン縫いの違い、強みと弱点、そして使い分けのポイントを詳しく解説します。
手縫いの特長と魅力

手縫いは、古くから革職人が受け継いできた伝統的な技術です。
1本の糸に2本の針を使い、交互に針を通して縫い進める「サドルステッチ」という技法が代表的です。
この方法では、糸が交差して革をしっかりと挟み込むため、非常に高い強度を発揮します。
糸が一部切れてもほつれにくく、全体の縫い目がしっかり支え合う構造になっているため、長期間使用しても縫い目の崩れが少ないのが大きな魅力です。
また、手縫いならではの温もりや立体感も見逃せません。
ステッチのひとつひとつに職人の呼吸が宿り、微妙な力加減や糸の締まり具合で、機械では再現できない“人の手の味”が生まれます。
その一方で、手縫いは非常に時間と手間がかかる作業でもあります。
ひとつの財布や鞄を仕上げるのに何千回もの針通しを要し、大量生産やスピード納期には不向きです。
また、職人の経験や技術に依存する部分が多く、品質の均一化が難しい点も課題といえるでしょう。
つまり、手縫いは「時間と労力をかけるかわりに、唯一無二の仕上がりを得られる」手法なのです。
高級ラインや一点もの、長期使用を前提とした製品では、今もなお重宝されています。
ミシン縫いの特長と強み

一方で、ミシン縫いは産業革命以降に発展した、効率的かつ安定した縫製方法です。
現在の革製品の多くはミシンで縫製されています。
その最大のメリットはスピードと均一性。
熟練の職人でなくても、一定のトレーニングで安定した品質の縫製が可能になります。
また、ミシン縫いは直線・曲線を問わず正確に縫い進められるため、デザインの再現性や生産効率に優れています。
近年では工業用ミシンの性能も飛躍的に向上しており、厚手の革や硬い素材でもしっかりと針を通せるパワーを持つモデルが多数登場しています。
適切なミシンと糸の組み合わせを選べば、強度面でも十分に実用的です。
ただし、ミシン縫いにも弱点があります。
基本的に1本の糸で連続的に縫う構造のため、糸が一箇所で切れるとその部分からほつれが広がるリスクがあります。
また、立体的な構造や入り組んだパーツでは、針の角度や圧力の調整が難しく、仕上がりの柔らかさや自然な風合いが損なわれることもあります。
それでも、コスト・スピード・安定性のバランスを考えれば、ミシン縫いは現代の革製品づくりにおいて欠かせない存在です。
強度・仕上がり・生産性で見る「一長一短」
手縫いとミシン縫い、それぞれの特性を比較すると、どちらにも明確なメリットとデメリットがあることがわかります。
| 項目 | 手縫い | ミシン縫い |
| 強度 | 高い(糸が交差構造のため切れにくい) | 一般的にはやや弱いが、設定次第で補える |
| 仕上がり | 温かみ・立体感がある | 均一で精密、直線が美しい |
| スピード | 非常に遅い | 高速・効率的 |
| コスト | 高め(人件費・時間) | 低コスト(大量生産向き) |
| 向いている製品 | 高級財布・一点物・修理品 | 鞄・ポーチ・量産製品 |
つまり、どちらが「優れている」ではなく、「向いている場面が違う」のです。
職人の技術を活かして唯一無二の価値を生み出すなら手縫い。
ブランドとして一定の品質を安定供給したいならミシン。
この使い分けが、革製品メーカーの品質設計を支えています。
用途別に見る最適な縫い方
では実際に、製品の種類や使用目的によってどのように縫い方を選べばよいのでしょうか。
以下に代表的な例を挙げます。
- 財布や名刺入れ
頻繁に開閉し、摩擦が多いため強度重視。
手縫いのサドルステッチが最適。見た目にも高級感が出ます。 - 鞄やトートバッグ
大きなパーツを安定して縫う必要があり、効率性も求められるためミシン縫いが中心。
部分的に負荷がかかる持ち手部分のみ手縫いで補強するケースもあります。 - 小物・キーケースなど
デザインと耐久性の両立を目指して、手縫いとミシン縫いを組み合わせるのが理想。
たとえば表面は手縫いで立体感を出し、内部構造はミシンで整えるといった方法です。
このように、「どちらか一方」ではなく、最適な組み合わせを考えることで、製品ごとに最もバランスの良い仕上がりを実現できます。
環境・効率の視点から見る縫製
近年では、縫製方法の選択にも「環境への配慮」や「持続可能性」という新たな観点が求められています。
手縫いは電力を使わず、人の手で完結するため、環境負荷が小さいのが特長です。
また、修理やリメイクにも柔軟に対応できるため、“長く使えるモノづくり”にも貢献します。
一方、ミシン縫いは効率性に優れており、無駄を減らせる生産方式です。
適切な工程管理を行えば、素材ロスや不良品の発生を抑えることができ、結果的にエネルギー消費を削減することにもつながります。
つまり、環境の観点から見ても、手縫い・ミシン縫いのどちらかが絶対的に優れているわけではありません。
それぞれの強みをどう活かすかが鍵になります。
目的に合わせて、最適な方法を選ぶ
革製品づくりにおける縫製方法は、単なる工程の違いではありません。
それは「製品の価値をどのように設計するか」という考え方そのものです。
- 手縫いは、強度・風合い・職人技を重視するものづくりに向いています。
- ミシン縫いは、効率・均一性・量産体制を重視する生産に向いています。
どちらにも一長一短があり、どちらも欠かすことはできません。
理想は、製品の目的・使用シーン・コスト・納期を総合的に判断し、最適な方法を選択または組み合わせることです。
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